A.これまで厚生省水道環境部水道整備課、環境省廃棄物・リサイクル対策部企画課、国土交通省下水道部下水道企画課、厚生労働省健康局水道課、環境省地球環境局地球温暖化対策課、環境省関東地方環境事務所廃棄物・リサイクル対策課長などを経て、2020(令和2)年7月から環境省地球環境局地球温暖化対策課の室長を務めさせていただいています。
A.私の部署は地球温暖化対策にかかるイノベーションと社会実装の事業を多岐にわたり実施しています。例えば、再生可能エネルギーの導入に向けた事業も実施しており、その中の一つとして東京から1,900km以上離れた南鳥島のような離島で再生可能エネルギーを段階的に導入し、設備が稼働できるよう分散型エネルギーシステムの構築を目指した実証事業にも取り組んでいます。
A.発電などに必要なエネルギーは船で輸送し、タンクで貯蔵しています。そういう意味では南鳥島は化石燃料依存率100%ということですね。
A.はい。これまで宮古島などで取組を進めていたので、その経験も生かしながら南鳥島、硫黄島における再生可能エネルギーの導入を進めています。
A.宮古島では公営住宅などに太陽光発電を初期負担0円で設置するよう試みました。また、住宅用太陽光発電のほか、ヒートポンプ給湯機、家庭用蓄電池などの普及に向けて積極的に取り組みました。
A.ご存知のように南鳥島は遠隔地であり、必要資材を運ぶのは至難の技です。しかし、国土交通省が港湾施設を整備してきていることにより、以前に比べれば搬入がだいぶ容易になる見込みです。
調査に関して言えば、まずは、太陽光発電設備が潮風などの塩害で故障しないかを確認する必要があります。また、希少な生物が生息している可能性もあるので、その確認をするとともに再生可能エネルギーを活用することによって生物が受ける影響も調査しなければいけません。現在のところ、それほど大きな影響はないだろうと考えていますが、南鳥島という名前のとおり、たくさんの鳥が飛来してくるので、鳥の種類なども踏まえて観察しています。再生可能エネルギーで発電する事業は10年、20年単位で行われるので、その間に生息する生物への影響は必ず調査しなければいけません。
A.再生可能エネルギーは大きく5種類あります。太陽光・風力・地熱・水力・バイオマスです。 南鳥島において地熱・水力・バイオマスの活用は難しいと考えています。地熱は地下が熱くないとできませんし、水力は水が高い所から低い所へ流れる時の位置エネルギーを利用するので平地の南鳥島では難しく降水量も少ない状況です。また、南鳥島は大きくないので、植物などのバイオマス資源を利活用することにも限りがあるでしょう。基本的には太陽光と風力といった再生可能エネルギーの導入に関して調査し、発電量などを検討していくことになるかと思います。
A.そうですね。巨大な風力発電だと生態系への影響も考えられますが、小型であれば導入は可能なのか、そのあたりも確認しながら計画していく予定です。
A.南鳥島は降雨量が少ない島なので、太陽光発電の発電時間から見ると極めて良好なエリアになります。現在も調査を進めており、来年度には具体的な設計を行っていくので、早ければ令和5年度頃から設置が始まるのではないかと見込んでいます。
A.少なくとも春夏秋冬、すなわち1シーズンごとに現地調査を行う必要があると考えています。防衛省や気象庁、国土交通省の職員が概ね1〜2ヶ月単位で交代しながら常駐していますので、入島するタイミングを見て私たちも船や飛行機に相乗りさせていただき、可能な限り調査を行っています。必要な電力を再生可能エネルギーによってどれだけ賄えるのかを南鳥島で実証し、将来は国内の離島などにも展開していければと思います。
専門の事業者の方々がチームとなって島に行きます。1チーム5名ほどで構成され、5,6チームで実施していますが、1度に全員が現地に行くのではなく、2,3チームが交互に行って調査を行います。今回は沖縄電力株式会社さんが調査を行っています。離島では一般送配電事業者による離島供給制度に基づく電力供給のみ行われており、沖縄電力株式会社さんは数々の有人離島にディーゼル発電機を主体として電力供給を行っていますが、燃料高騰による影響が大きかったり、発電原価が比較的高かったりと課題は多いようです。そこでディーゼル発電の焚き減らしが可能となる太陽光や風力などの再生可能エネルギーを導入することで会社の実績を積み重ねることができるということもあり、とても熱心に調査に取り組んでいただいています。
A.2020(令和2)年8月に小泉前大臣と一緒に訪れました。朝に自衛隊機で出発して昼に到着し、午後3〜4時頃まで見回って戻ってきました。
A.内閣府が科学技術イノベーション実現のために創設した「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)」という国家プロジェクトがあるのですが、そこでは海洋資源を高効率に調査する技術を確立して、海洋資源調査産業というものを生み出しています。南鳥島には資源が豊富にあると注目されているため、うまく活用できないかという検討も進んでおり、私も構成員のメンバーとして参加しています。
A.昨年5月に国際エネルギー機関(IEA)が世界エネルギーの見通しを発表したのですが、その報告書には2050年カーボンニュートラル達成のためには、電力の7割は太陽光と風力で賄わなければいけない、今後は再生可能エネルギーを9割の世界にしていく必要がある、といったことなどが提言されています。そう考えると、これから30年の間に化石燃料に頼った電力システムから再生可能エネルギーの活用に移行していかなければいけないということになります。再生可能エネルギー発電になれば太陽光、風力といった分散型エネルギーの活用が可能になるため、それぞれの地域の特徴を生かして自ら供給に参加できることになりますし、エネルギーの需給構造に柔軟性を与えることができます。それがどんなに小さい地域でも達成できるということを、まずは南鳥島で示していくことが重要だと考えています。世界地図で大きく見れば、南鳥島と同じように日本も外から食料やエネルギーを供給していかないと生活が成り立たない構造となっています。私も含め都民の皆さまもその恩恵を受けて経済を発展させ新しい世界を切り開いてきたと思います。今後は再生可能エネルギーと共に新たな社会へと変遷をとげなければいけません。いきなり東京全体で実践するのは難しいかもしれませんが、南鳥島での成果を少しずつ様々な地域で反映させていければと思います。そして最終的には東京の皆さまや日本の皆さまに還元することができるのではないかと考えています。南鳥島で再生可能エネルギーを普及させる取組は、今後の都民の皆さまの生活を変えていく、とても重要なものになります。これからも皆さまのお役に立てるように尽力していきたいと思います。