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国土地理院 測地観測センター
電子基準点課長

川元 智司 様(写真の中央)
観測係長
熊谷 光起 様(写真の左側)
電子基準点係
橋本 哲志 様(写真の右側)
※取材日:2022(令和4)年7月29日

国土地理院にて

    ◆経歴とお仕事について

  • Q.経歴について教えてください。

    川元:平成18年度に国土交通省に入省し、国土地理院の測地観測センターや研究部門の地理地殻活動研究センターに在籍し、電子基準点による地殻変動の監視、衛星測位に関する技術開発、電子基準点のデータ提供などの業務に携わってきました。準天頂衛星「みちびき」の補強信号について、打上げ前に検討されていたいくつかの候補のうちの一つの開発にも携わりました。直近ですと、内閣府防災担当において主に南海トラフ地震対策に2年間従事し、令和3年4月から現在の部署にいます。

    熊谷:採用後、測地観測センターに配属となり、データ提供などの業務を行ってきました。その中で、南鳥島の電子基準点の保守にも携わりました。

    橋本:測地部に所属し三角点の管理をしてきましたが、今年度、測地観測センターに異動となりました。つい先日、沖ノ鳥島に行き、電子基準点の予防保全を行ってきたところです。

  • Q.お仕事の内容について教えてください。

    A.国土地理院では、電子基準点を全国約1,300か所に設置しています。電子基準点は、測量や全国の地殻変動監視のほか、ICT施工やスマート農業等の高精度測位にも広く利用されている重要なインフラです。その電子基準点の維持・管理を行っているのが測地観測センターの電子基準点課です。電子基準点が従来の三角点や水準点と異なるところは、GPSや準天頂衛星等の測位衛星(GNSS)の電波を受信できるところです。精密機器が含まれるため、電子基準点を設置している現地に出向いて修理したり、老朽化した機器の更新をしたりするのが維持・管理業務になります。さらに、収集したデータを精密に解析して、ミリメートル単位で基準点の位置を求め世の中に提供することも業務の一つです。

    ◆国土地理院について

    電子基準点課長 川元 智司 様
  • Q.国土地理院とはどのような機関なのでしょうか。

    A.国土地理院は日本で唯一の国家地図作成機関で国土交通省の特別の機関です。前身となる機関は1869(明治2)年に創設されていて、150年以上の長い歴史を有しています。土地の測量及び地図の調製に関する政策を通じて、地理空間情報の活用を推進し、国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に貢献しています。

  • 電子基準点課長 川元 智司 様
  • Q.地図ができるまでの流れについて教えてください。

    A.現在、地図は写真測量で作成する方法が一般的です。測量用航空機で空中写真を撮影して、図化機を用いて写真を立体的に見ながら、道路や等高線などの図化を行います。図化ではわからない道路の幅員や建物の用途などは現地に行って調査し、最後に、地図記号や地名などを編集して地図を描きます。撮影、図化、編集の工程は全てデジタル化されています。

    ◆基準点(三角点、水準点、電子基準点等)について

    観測係長 熊谷 光起 様
  • Q.基準点とはどのような役割があるのでしょうか。

    A.三角点は世界のどの位置にあるかを知るための緯度経度を、また、水準点は東京湾の平均海面からの高さを決めるための基準となります。電子基準点はその両方の役割を持っており、GPSや準天頂衛星等の測位衛星の電波を受信して観測しています。他にも宇宙からの電波で地球を測るVLBI観測局があり、地球の自転の速さや地球上における日本の位置を精密に測っています。また、地球の重力加速度を観測するための重力点や、地球の磁場を観測するための磁気点もあります。

  • 観測係長 熊谷 光起 様
  • Q.基準点は、全国にどれぐらい設置されているのでしょうか。

    A.三角点は約11万点、水準点は約1万6,000点、電子基準点は約1,300点設置されています。

    ◆沖ノ鳥島・南鳥島における業務内容、両島の基準点(三角点、電子基準点)について

    電子基準点係 橋本 哲志 様
  • Q.沖ノ鳥島・南鳥島における業務内容、基準点の設置時期や目的について教えてください。

    A.沖ノ鳥島・南鳥島において、定期的に基準点の適切な保全や管理を行っています。両島はそれぞれ日本の一番南と東に位置しており、両島に設置された基準点によって国土の全体図を正しく把握することができます。この基準点を正しく維持・管理することが、海上交通の安全確保、海洋資源の開発や、精度の高い地図の作成に必要な情報として役立っています。沖ノ鳥島の一等三角点と三等三角点は1989(平成元)年、電子基準点が2005(平成17)年に設置、南鳥島の一等三角点と三等三角点は1992(平成4)年、電子基準点が2002(平成14)年に設置されました。日本周辺は地殻変動が活発なため、基準点をその都度正確に測定していくことが重要です。

  • 電子基準点係 橋本 哲志 様 沖ノ鳥島の電子基準点
  • Q.電子基準点ではどのようなデータを観測し、データはどの程度の頻度でどのように国土地理院へ送られるのでしょうか。

    A.測位衛星には、日本の準天頂衛星、アメリカのGPS、EUのガリレオなどがあります。電子基準点で取得されたそれらの衛星からのデータを、毎秒リアルタイムに国土地理院に送っています。沖ノ鳥島や南鳥島ではデータの送信に衛星通信回線を使用しているので、毎秒リアルタイムではなく観測したデータを1日数回に分けてまとめて送るようにしています。

  • Q.沖ノ鳥島・南鳥島の電子基準点の通信に必要な電気は、どのように確保しているのでしょうか。

    A.ソーラーパネルで電気を確保しています。ソーラーパネルの裏側に収容箱があり、バッテリーが内蔵されています。

  • 南鳥島の電子基準点
  • Q.電子基準点のメンテナンスはどのように行っているのでしょうか。

    A.沖ノ鳥島・南鳥島のそれぞれの島に定期的に行き、電子機器やバッテリーなどの交換を行っています。両島とも簡単に行くことができない島ですので、機器が故障して観測が滞ることがないように、予防保守として一定期間ごとに交換を行います。また、通信状態が問題ないか、機器への水漏れがないかなどの確認も行います。

  • Q.これまでに収集されたデータから、プレートの動きや地殻変動など何か判明したことがあれば教えてください。

    A.国土地理院では、全国約1,300か所に設置している電子基準点を精密に解析しています。その結果、東京周辺では西に年間3~4cmほど、また、南海トラフ地域でも北西方向に年間3cmほどと、少しずつ移動していることが判明しています。その他にも、大きな地震が発生した場合に、地盤が大きく動いて広い範囲で地殻変動が起きます。2011(平成23)年の東北地方太平洋沖地震の際は、宮城県の牡鹿半島に設置してある電子基準点で水平方向に5.3m移動し、上下方向では約1m沈降しました。

  • 沖ノ鳥島の電子基準点 南鳥島の電子基準点

    ◆最後に

    国土地理院
  • Q.東京都では、国土地理院にご協力をいただき、地理院地図を使って「沖ノ鳥島・南鳥島からの距離を測ってみよう!」というコンテンツを公開していますが、地図の活用方法をご紹介いただけますでしょうか。

    A.最近ではWeb地図を利用される方が増えてきたように感じています。国土地理院のWeb地図である「地理院地図」では、距離を測ることができますし、土地の起伏を視覚的に解りやすく表現することもできます。また、高速道路や国道などの新規開通時は迅速に更新することで、最新の道路の状況なども把握することができますので、是非多くの方にご活用いただければと思います。Web地図の他にも従来の紙の地図も発行しています。皆さんが想像している以上に山では電波が入りにくいため、そういった状況では紙の地図が大変重要になります。Web地図と紙の地図は状況に応じてご活用いただきたいと思います。

  • 国土地理院
  • Q.都民の皆様へメッセージをお願いいたします。

    A.今回は、南鳥島・沖ノ鳥島に関することでしたが、東京都であれば小笠原諸島などの離島にも基準点を設置しています。国土地理院には千代田区に関東地方測量部もあり、測量行政のために日々職員が従事しています。都民の皆さんも、基準点を見かける機会がありましたら「こんなところでも国土地理院が測量しているのだな」と思い出していただき、基準点を大事に扱っていただくとともに、測量行政を身近に感じていただけたら幸いです。


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