 
						A.大学入学から博士前期課程(修士課程)までは九州大学理学部で学びました。そこで地球科学に興味を持ち、地震や地球内部の構造に関する研究に取り組んでいました。後期課程からは東京大学に移り、より専門的な研究を進めました。 現在は東京海洋大学に所属し、「地球科学概論」や「海洋底科学」などを学生に向けて講義しています。また、大学院では「海洋底地球科学」という講義を通じて、海底に関するより専門的な内容を扱っています。
A.一昨年、昨年とも年3回ほど航海に出ており、今年も同じくらいの頻度です。 今年はまず、授業の一環として、6月に学生とともに房総半島沖で5日間の実習航海を行いました。その後、7月には沖ノ鳥島周辺で現地調査行うため2週間の航海を行い、10月には、再び房総半島沖へ5日間の航海に出る予定です。

A.楽しみの一つは食事です。船内で作られた料理はとてもおいしく、毎回楽しみです。また、夜にはお酒を飲みながら過ごす時間もあり、それも航海中のささやかな楽しみです。また、私は波の様子や景色を見るのが好きなので、時間があるときはゆっくり海を眺めたり、朝焼けや夕日などの美しい自然の風景を楽しんだりしています。 ただ、過去には、嗜好品として持っていく甘いものを、航海途中で食べきってしまい、かなり辛かったこともありました。その後は同じ状況にならないように甘いものは多めに持っていくことにしました。そういうちょっとした出来事も、船の上では印象に残る思い出になっています。


A.固体地球物理学では、地球の“固体部分”を物理的な現象から探る研究を行っており、地震波を用いて地球の内部構造や地震の発生様式について調べています。 また、海洋底地球科学では、今年の10月に予定している房総半島沖での航海において、海底に設置した基準局の位置を船から音波で測定します。この調査を何年も継続して実施し、その変化を追跡することで、海底がどのように動いているかを明らかにしようとしています。 専門としてこの分野を選んだきっかけは、私が高校生の時に発生した長崎県の雲仙・普賢岳の噴火でした。高校の授業で噴火の話を聞き、「災害によって人の命が失われるのは嫌だ」と強く感じた私は、地球そのものを研究対象とする地球科学の道に進むことを決め、大学では地震学の研究室を選びました。ある日、研究室で海域の地震観測を始めることになり「誰がやるか」という話になった際、教授から「祖父母が漁師だったら船酔いしないだろうからやってみるか」と言われ、観測に参加することになりました。実際に観測してみると非常に面白く、今日まで海底地震学の研究を続けています。
A.最も印象に残っているのは、東北地方太平洋沖地震の直後に行った余震観測です。海の色は茶色く濁り、屋根や瓦礫が海を漂流しているのが見えました。航海中に天候が悪くなり仙台湾に避難したのですが、そこには自衛隊や海上保安庁の船が数多く集まっていてその光景は今でも印象に残っています。また、調査では、福島沖にも地震計を設置する計画でしたが、原発の影響もあり最終的には少し北の海域に変更して観測を行いました。地震直後に海底地震計を設置することで余震活動をより正確に把握することができ、東北地方太平洋沖地震がどのような地震だったのかを推測するうえで非常に重要なデータとなりました。

A.一番のやりがいは、将来の防災・減災につながることです。地震波を用いて地下の構造を探ることで、実際の地震が発生したときの揺れをシミュレーションすることができます。そうした研究成果が少しでも防災に役立つのであれば、それは非常に意義のあることだと感じています。もうひとつは純粋な好奇心です。これまで誰も知らなかったことが明らかになる瞬間は、研究者として喜びを感じます。

A.東京都が沖ノ鳥島・南鳥島に関する研究調査を実施していることについては、令和6年度から本大学の古山准教授が、現地に赴かない形での研究調査を行っていたため知っていました。その後、令和7年度から実施する現地調査を伴う研究調査の公募があった際、学内で「所有する船舶や実習航海を活用して調査研究を行ってはどうか」という話があり、応募することになりました。 この研究調査では、沖ノ鳥島の「過去」と「現在」の両面から調査を進めました。 まず「過去」については、沖ノ鳥島がどのように形成されたのか、その基盤となる火山活動の解明を目的としています。海底地形や地下構造の調査も重要なテーマであり、地震波の伝わり方を解析するために海底地震計を設置しました。これにより、海底の下に広がる地質構造を明らかにすることができます。 また、沖ノ鳥島周辺の海底に転がるサンゴの化石には、過去の気候変動等の履歴が刻まれおり、これらをサンプリングして分析することで、沖ノ鳥島がどのような環境変遷を経て現在の姿になったのかを探っています。 一方「現在」については、将来的な漁業資源の可能性を探るため、沖ノ鳥島周辺にどのような水産物が生息しているかを確認しています。今後、定期的に調査を行うことで海洋環境の変化を追跡できると考えています。また、沖ノ鳥島の近海に漂う海洋ごみの分布を調べて、海洋環境の現状も調査しています。


A.まず、沖ノ鳥島がこれまで辿ってきた形成過程の解明(過去)です。沖ノ鳥島周辺は形成メカニズムがまだ十分に理解されていない背弧海盆(※)拡大の一例として、非常に興味深い場所です。また、沖ノ鳥島周辺の漁場特性の把握(現在)を行いたいと考えています。沖ノ鳥島周辺でのクルーズやホエールウォッチングなどの観光ニーズは、一定程度あると考えています。これらは沖ノ鳥島の保全や、産業利用を検討する上で不可欠な情報です。
                                
※背弧海盆(はいこかいぼん)海溝から海洋プレートが沈み込む背後に位置する盆地状のくぼみ
                            

A.沖ノ鳥島の名前は知っていても、「東京都の島」として認識している方はまだ少ないのではと思います。 東京都の調査研究を通じて沖ノ鳥島のことを少しでも多くの方に知っていただけるよう、研究成果とともにアピールしていきたいと考えています。 また、私自身の研究の根底には「災害によって命が失われることを少しでも減らしたい」という思いがあります。防災・減災に向けた研究をこれからも続けていきたいと思っています。